AC(アダルトチルドレン)で悩んできた私が、自分なりに導きだした 癒しの言葉(ヒーリング・エッセイ+ヒーリング・ポエム) お役に立てるかわかりませんが、心を込めて一生懸命書くことを誓います
今のは取り消します!
2010年09月03日 (金) | 編集 |

今のは取り消します! 


悩みの問屋。 奈緒子は自分のことをそう称していた。 子供の頃から悩み続けてきた。 そして大人になった今。 昔と変わらぬ思いに苦しんでいる。

なぜ私だけがうまくいかないの?

なぜ友達は幸せそうなのに私はそうじゃないの?

なぜ私は運が悪いの?

奈緒子は少しでも現状を変えたくて、今まで多くの「幸せ」に関する本を読んできた。 幸せにしてくれそうなサイトやブログも検索してきた。

そういう映画やTV番組も見てきた。 人の言葉にも耳を傾けてきた。

それでも・・・彼女は悩むことをやめない。

そんな奈緒子をあたたかい目で見てくれてる人が一人いた。

会社の後輩、といっても男の後輩だ。

2つ年下のこの後輩を、奈緒子の方もあたたかい目で見てきた。 なんとも憎めない、その性格。 恋愛の対象ではないが、話していて飽きない相手だ。

約3年つきあってきた彼と別れた翌日のこと。 めったにこんなことはないのだが、奈緒子はこの後輩を誘ってみた。

この人なら私の悩みをわかってくれるかもしれない・・・そう思ったからだ。 お酒の力を借りて、奈緒子は思ってきたこと全部、後輩に打ち明けた。

恋愛もうまくいかない。

仕事もうまくいかない。

子供の頃からずっと運が悪かった。

なぜ? 自分だけなぜ?

解決しようと努力してきたことも話した。 本、ネット、人の言葉、映画。 いろんな方法で幸福になろうと努めてきたのに。

後輩はお酒を飲みながら、じっと聞いていた。 そして、うんうんとうなずいてくれた。

「僕もね、そうだったんですよ。 昔はね」

「また! あなたはお気楽に見えるけど?」 お酒で遠慮がなくなった奈緒子はちょっと失礼なことをいってしまった。 だが後輩は気にする様子もなかった。

「僕も研究し続けてきました。 本も読んだしネットも・・・同じことしてきました」

「それで今は幸せ?」

その質問に、後輩は臆することなく断言した。

「しあわせです!」

「どうしてそう思えるようになったの? よかったら教えて」

後輩はにっこりした。

「いいですけど、その前に・・・いいこと教えましょう。 本を読んできた奈緒子さんは、常日頃口にする言葉が現実化されてしまうこと、知ってますよね」

「だからいい言葉、プラスになる言葉を言い続けた方がいいんだってことも知ってますよね」

「それはわかっているけど、運が悪いことが起こるとやっぱりマイナスワードも使っちゃうし、頭に思い浮かんじゃうんですよね」

「そういう時は取り消すんです。 毎回 取り消すんです!」

後輩のすすめる方法はこうだった。 

ついていない。 どうせうまくいかないんだ。 という言葉をついつい発してしまったら、そのたびに

「今のは取り消します!」

と強く宣言する。 これがその方法だった。

すごく単純だけど、効き目があると後輩はいう。 

確かに、いろんな方法を研究してきた奈緒子も 「取り消し」の方法までは試したことはなかった。 後輩はお気楽に見えるがいい加減ではない。 お調子者でもない。

この人がいうのなら、多少は効き目があるのだろう。 奈緒子はもう少し、彼の話を聞いてみようと思った。

そして2時間が過ぎた頃。

奈緒子はほんの少し、幸せになっている自分に気づいた。 彼氏と別れてすぐだというのに。 どうしたのだろう。

それは・・・後輩がこんなことをいったのがきっかけだった。

「僕がしあわせな理由ですか? それは、奈緒子さんとこうして一緒にいられるからです」

後輩は奈緒子のことを思い続けてきたという。 だが奈緒子にその気がないのを知っていたから、また彼氏がいるのを知っていたから、自分の胸に秘めてきたのだった。

恋人と別れたばかり。 いくらなんでも気持ちが整理できていない。

なのになぜかうれしい。 後輩のことは嫌いじゃない。 恋愛相手じゃないとは思っているけど。 それでもなぜかうれしい。

奈緒子は茶化していった。

「それ、”今のは取り消します”じゃないでしょうね?」

「これは違いますよ。 これは、”今のは強く肯定します”です」

その後。

お気に入りの後輩から教わった”今のは取り消します”の方法を使って、奈緒子は少しずつ、少しずつ、明るい方向に考えられるようになっていった。

うまくいかない。 ついてない。 だめだ。 そういう言葉が口をつくたび、彼女はすぐさま取り消す。

「今のは取り消します。 ほんとはうまくいくんです。 ほんとは運がいいんです。 最終的にはうまくいくはず。 だめなんかじゃない。 私はついてる。 恵まれてる。 だいじょうぶ、ありがとう」

で、勘のいい読者の方はもう想像がついていることと思う。

あれから半年。 週末のたび、二人はデートを重ねるようになった。 後輩はもはや後輩ではない。 奈緒子の恋人である。

奈緒子も元後輩も後ろは向かない。 時々不安になったときは「取り消し法」を使って、また前に歩き出す。

来月。 ふたりはさらなる確実な幸せに向け、婚姻届を出すことにしている。




~おしまい~


読んでくれてありがとう。 他のお話も読みたいという方は、こちらもどうぞ!





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