ゴミおじさんの人生論(幸せになれるオリジナル小説)

ゴミおじさんの人生論


郊外のとあるマンション。 そこにゴミおじさんと呼ばれる60代の男性が住んでいた。 

マンションの前はゴミだらけ。 道行く心ない人たちや近所の柄の悪い子ども達が、平気でゴミを捨てていく。

ゴミおじさんは誰に頼まれるわけでもなく、朝、夕、マンション前を掃除していた。 ゴミをていねいに拾い、拾った後はホウキで掃いてきれいにするのだ。 

だがおじさんがいくらきれいにしても、ゴミが減ることはない。 捨てていく人が絶えないからだ。


ある日の夕方、ゴミおじさんが掃除をしていると、同じマンションに住む10代の少年ユウヤと、その仲間達が現われた。 生意気盛りの彼らは、近所でも評判の悪い子たちだった。 

リーダー格のユウヤが、ゴミおじさんの作業をじゃまするかのように立ちはだかった。 そしてこういった。

「よう、おっさん。 かっこつけてるんじゃねぇよ。 そんなにいい人と思われたいのかよ」

ゴミおじさんは答えた。

「自分が楽しいからやってるだけだよ」



それから数日後。 ユウヤがひとりで学校から帰ってきたときのこと。 夕方だった。 

また、おじさんがマンションの前を掃除していた。 この間は友達の前で強がっていたユウヤ。 本当は罪悪感を感じていたのだ。 でもまだ素直になれなかった。

「お、きみか。 元気かい?」

今度はおじさんの方から話しかけてきた。

「別に。 ってかさ、なんだっていつもそんなことしてるわけ?」

こないだよりトーンダウンしたユウヤがこうたずねると、おじさんは手を止めて答えた。

「楽しいからだよ」

ユウヤの父親は単身赴任中でめったに帰ってこない。 ユウヤはもう長い間、大人の男の人とゆっくり話したことがなかった。

「マジに言ってんの?」

「ああ、ゴミはね、正直なんだ。 片づければ素直に動いてくれる」

ユウヤには意味がわからなかった。 それでも、もっとこの話を聞いていたい気になった。 そこで、もっとゴミの話をしてほしいと思わず懇願してしまった。

おじさんは話し始めた。

「たくさんあるゴミが、少しずつ順々になくなっていくのは気持ちがいいもんだよ」

「でも片づけてるそばから、捨てていく人がいるじゃないか。 無駄だよ。 こんなんじゃ一生きれいにならないよ」

とユウヤ。 

おじさんはそばの植え込みの枠に腰掛けた。 コンクリートになっており、座るのにちょうどいい高さだったのだ。 気づくと、ユウヤも隣に座っていた。


人生にはゴミがつきものだ。 このゴミが片づいたと思ったら、今度は別のゴミが出てくる。 切りがない。 だけどね、それでもこれは無駄じゃないんだ

「人生のゴミはすごく多いように見えるけど、次から次へ出てくるように見えるけど、実はそうじゃないんだよ」

人生のゴミはね、自分で片づけられる範囲のゴミなんだ

「次々出てくるゴミ、これをきれいにするには方法は一つしかない。 地道にやっていくことだ。 いつの日か、ゴミは少しずつ減ってくる。 わからないくらい少しずつだけどね」

「いつの日か、ゴミは片づく。 とてもいいもんだよ。 きれいになっていく様子を見るのは、気持ちのいいもんだよ」

ゴミを片づけるのも、だんだん楽しくなってくる。 人生と同じさ


元来、ユウヤは頭の回転の早い子だった。 彼は思った。

「オレの人生はゴミだらけで、あきらめるしかないと思ってた。 でも、地道に片づけていけば、いつかいいことあるかも知れない」


その日を境に、ゴミおじさんには強力な仲間ができた。 

人々は、赤の他人同士である年齢の離れた二人が、いつも楽しそうに談笑しながら、マンション前を掃除している姿を目にするようになった。



・・・十年後。 

不思議な縁で、海外で働くことになったユウヤ。 苦しいこともたくさんあるけれど、毎日が充実している。 ユウヤは今でも、ゴミおじさんの言葉を思い出す。

ー人生のゴミは、自分でコツコツ片づけていくしかない。 でもそれも、いいもんだよ・・・ 人生って思ったより、いいもんだよ。


~おしまい~


読んでくれてありがとう。 他のお話も読みたいという方は、こちらもどうぞ!

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Comment

こんにちは!
このゴミおじさんの人生、きっと大変だったんだろうな・・って思ってしまいました。
その中で得た事なのでしょうか。。
1つ1つコツコツとやっていってこそ
成果がでるのですね。
しかもそこには楽しむ事も・・・。
焦って何かをやっても決して良い結果はでないですから・・。
「石の上にも三年」でしょうか(笑)
ユウヤくんは、このおじさんと出会えて幸せですね。
素晴らしいことを教えてもらえたのですから。
シャイさんの以前の詩、
カメでもいい・・・みたいな詩ありましたよね!
それを思い出しました。

  • 2009/08/01 13:39
  • sugar salt
  • URL
sugar saltさんへ
こんにちは。

> このゴミおじさんの人生、きっと大変だったんだろうな・・って思ってしまいました。

そうですね、だからこそ悟れたのでしょうね。

> 「石の上にも三年」でしょうか(笑)

人は結果がすぐに出ないと、あきらめてしまったりするものですが、本当に
この諺通りですね。 コツコツやっていくとやがては花開いたりするんですよね。

> シャイさんの以前の詩、
> カメでもいい・・・みたいな詩ありましたよね!
> それを思い出しました。

わ、覚えていてくれてありがとう。
カメさんっていいと思いますよ~ほんとにね。
シャイさんこんばんは♪
前に、若い人たちは海岸の掃除をしているのをテレビで見ました。
そのメンバーのうちの一人が次々やってくるゴミに弱音を吐き、意味があるのか判らないというようなことをいっていたのを思い出しました。
海から来るゴミは多分果てしなく、世界を相手にすることです。なので、そこを綺麗に掃除するだけではおそらく一生かかっても綺麗にはならないでしょう。
だけど、無意味じゃないですよね。片付けた分は片付いてるんですから。
それに、それが報道されたことによって変わるものもあるはずです。続ければその活動の知名度も上がるでしょうし、知ってもらえればそこからきっと何かが変わるのだと思います。
でも…、毎日片付けてる最中にも流れ着くゴミをみたら普通は心が折れますよね。
だから私はその若い人たちのやろうと思ったその気持ちが凄いと思うんです。ゴミおじさんと同じく。
なんかまた話が逸れましたが、善意でやることに無駄はないと信じたいです。
そして、目に見える掃除と心の掃除はきっと繋がってると…そう思います。
紫桜 凛さんへ
凛さん こんにちは。

楽しい休日過ごしてますか。
いいお話を聞かせてくれてありがとう。 コメント欄でこういうお話が聞けるなんて
ブロガー冥利につきますね。 

> なんかまた話が逸れましたが、善意でやることに無駄はないと信じたいです。
> そして、目に見える掃除と心の掃除はきっと繋がってると…そう思います。

すばらしい。 凛さんの考え方 とても素敵です。
ホンモノの掃除と心の掃除を結びつけたところなど、まさに詩人ですね。
今日も、ありがとう。
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