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ゆっくりブログ (AC癒しのメッセージ)

アダルトチルドレン(AC)として悩んできた私、ときどき鬱症状が出てしまう私が思う 癒し・幸せについて。オリジナルの言葉で発信していきます

しあわせ回数券(幸せになれるオリジナル小説)

しあわせ回数券


取引先のS君は実に気持ちのいい若者だ。 人間ができている。 それにいつも幸せそうだ。 

最近では公私共々なかよくなり、一緒に趣味を楽しんだりしている。 ある日のこと・・・私はついにS君に直接、聞いてみた。

「S君は若いのに、どうしてそんなに人格者なんだい? いつも笑顔が絶えないが、何か幸せのヒミツでもあるのかい」

するとS君は、たいして迷いもせずにこう言った。 

「しあわせ回数券のおかげですよ」 

しあわせ回数券?と驚く私に、S君は気持ちよく話をしてくれた。 

つい一年ほど前まで、S君はクヨクヨ・タイプの人間だった。 そればかりでなく、いつも内心イライラしていた。 不安だらけで、自分に自信がなくて、そのくせ人の悪いところはやけに目についてしまう。

ある日、会社で決定的なことが起きた。 直属の上司に人格を踏みにじられるような、ひどいことを言われたのだ。 翌日、仮病を使って休んだS君は、ふらふらと電車に乗り、意味もなく子供の頃住んでいた下町までやってきた。

下町とはいえ、だいぶ様子が変わっていた。 昔あったお店も今はない。 あの頃、気がめいると行っていた駄菓子屋さんも今はなかった。 そのかわり、駄菓子屋さんのあった場所には自販機が設置してあった。

のどが渇いたS君は、自販機で冷たいお茶でも買おうとしたが、思わずその手が止まった。 それは飲みものの自販機ではなかったのだ。 売られていたものは・・・なんと、「しあわせ回数券」だった。 これは何かの冗談だろうか? 

半ばやけになっていたS君は、300円をチャリンチャリンと入れ、そのしあわせ回数券なるものを手にした。 S君は思わず苦笑した。 紙製の、一昔前にあった電車の回数券入れのようなものが出てきたからだ。

回数券入れの裏側に 「使い方」が書いてあった。 

ー しあわせ回数券お買い上げありがとうございます。 ご使用前に使用法をお読みください。

ー このしあわせ回数券は、悩んだときだけ取り出してください。 順序良く、最初の一枚目からお使いください。 回数券はシール状になっておりますので、シールを剥がしてお読みください。

ー 注意事項。 お読みになりましたら、かならずその回数券を、細かくお切りになった上お捨てください。 これをしませんと、回数券の効果は消えてしまいますので、十分ご注意ください。

これは騙されたなと思いつつも、回数券入れをポケットに入れ、S君は家路に着いた。 

家に戻ったS君は好奇心がもたげてきて、どうしても回数券を利用してみたくなった。 そこで最初の一枚を取り出してみた。 すると・・・確かに回数券はシール状になっている。 S君は早速、そのシールを剥がしてみた。 そこに書いてあったのは・・・

「あなたの一番尊敬する人が、解決してくれます」

と書いてあった。 S君はまた苦笑した。 

「やっぱりインチキだ。 俺が尊敬しているのは亡くなったおじいちゃんだけだ。 この世にいないおじいちゃんが、どう解決してくれるというんだろう」

ところが・・・それから一時間後。 うたたねをしていたS君は、なんとおじいちゃんの夢を見たのだ。 おじいちゃんはS君にやさしく語りかけていた。

「気にしない、気にしない。 ゆるしてやれ、ゆるしてやれ」

その瞬間、S君は飛び起きた。 はっとした。 

「そうだ、上司のことだ。 上司のことを言ってるんだ。 気にしない、気にしない、ゆるしてやれ、ゆるしてやれ」

S君は、夢の中のおじいちゃんの言葉を繰り返してみた。 すると不思議と気持ちが落ち着いてきた。 上司の心ない言葉もゆるせるような気がしてきた。 

という具合に、S君は悩むたびに回数券を取り出すようになった。 

ひそかに憧れていた女の子に告白しようと迷っていたときは

「だいじょうぶ。 誠意は伝わります」 と書いてあった。

S君はこの回数券のおかげで、気持ちを伝えることができた。

不思議なことに、毎回タイムリーなアドバイスが書かれている。 悩みがちなS君は、どんどんこの回数券を利用するようになった。

そして、効き目がなくなることを恐れ、毎回、読んだら捨てることも忘れることはなかった。 

ついに、回数券があと残り一枚になってしまった。 もうこの日を最後に、回数券に頼ることはできないのだ。 最後の回数券をあけてみると、そこに書いてあったのは・・・

「最後の一枚までご使用いただきありがとうございます。 おめでとうございます! これであなたの幸せは保証されました。 しあわせ回数券卒業です」

「あなたはもうだいじょうぶです。 幸せのコツは、すべてあなたの頭の中にインプットされております。 あとは時々、頭の中の引き出しから取り出せばいいだけです」

「お気づきでしょうが、この回数券はどなたさまにも、どんな時にも役立てるようになっております。 あなたへの特別なアドバイスでもなんでもなく、基本的なことばかりなのです。 あなたは自分専用のアドバイスと思い込んでいただけです」

「それでもガッカリなさることはありません。 幸せの仕組みはむずかしいものではないからです。 基本的な、当たり前のことばかりだからです

「あなたはもうだいじょうぶです。 幸せを確約されたのですから、安心して日々笑顔でお過ごしください」

ここまで話がきたとき、私は思わず口をはさんだ。 

「なんだ、不思議でもなんでもなかったんだね。 確かにアドバイスの数々は、誰にでも当てはまりそうなことだもんね。 これはうまく騙されたな」

するとS君は

「いえ、僕は感謝してるんですよ。 だって実際に役に立ったのですから。 回数券はもう捨ててしまったけど、あの単純なアドバイスのひとつひとつは、僕の中にしみついてるんですよ」

S君は例の彼女と婚約したそうだ。 仕事は相変わらずだが、前のようには悩まなくなった。 まわりの人にも好かれ始めた。 もちろん、私のような取引先にもだ。

私は、ふと自分でもその回数券を買ってみたくなった。 そこで自販機の場所をS君に聞くと、彼はこんな風に答えた。

「それが不思議なんですよ。 あれからもう一度、自販機のあった場所に行ってみたんです。 ところが自販機は跡形もなく消えてたんですよ。 場所を間違えたのではないかって? それはないです。 以前、駄菓子屋さんがあったところですから」

というわけで、今となってはS君の話が真実であったのか確かめるすべはない。 だが私はS君の性格を知っているから、素直に信じるつもりだ。 

しあわせ回数券、実は誰でも心の中に持っているのかも知れない・・・


~おしまい~



読んでくれてありがとう。 他のお話も読みたいという方は、こちらもどうぞ!





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